腸・閉・塞ブートキャンプ 症例36

症例36

【症例】20歳代 男性
【主訴】心窩部痛

【現病歴】今朝より上腹部痛あり。一旦軽快していたが再度出現したため救急要請。昨日夕に白身の魚を含む刺身を食べた。
【既往歴】なし
【身体所見】BP 136/89mmHg、HR 74/min、BT 37.0℃、腹部:膨満、軟、心窩部に圧痛あり。反跳痛なし、筋性防御なし、腸雑音やや亢進あり。
【データ】WBC 17700、CRP 0.48

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それほど目立たないですが、小腸の拡張および液貯留あり。

右腹部に3層構造を保った壁肥厚および腸間膜の浮腫を認めています。

腸間膜の浮腫を有する腸管群を見た場合、closed loopの形成を考える必要がありますが、今回はclosed loopを疑う所見は認めません。

この壁肥厚を有する小腸の口側で拡張を認めています。

わずかですが、口側にはsmall bowel feces signを認めています。

腸管壁肥厚を有する腸管を閉塞機転とした腸閉塞であることがわかります。

では、なぜこのような腸管壁肥厚を認めているのでしょうか?

小腸における3層構造の肥厚を見て、安易に「ウイルス性腸炎!!!」と考えてはいけないのでした。

むしろそれ以外を考えなければならないのでした。

今回はどうでしょうか?

食事歴のエピソードと画像所見から疑うべきは、アニサキス小腸炎ですね。

アニサキス小腸炎の特徴として、

  • 3層構造を保った壁肥厚
  • 腸間膜浮腫
  • 腹水貯留

が特徴的でした。

今回も直腸膀胱窩に腹水貯留を認めており、この点も典型的といえます。

 

診断:アニサキス小腸炎(疑い)による小腸腸閉塞

 

※アニサキス虫体が確認されたわけでもなく、抗体検査がされたわけでもないので、アニサキス疑いとします。保存的に加療されました。

その他所見:

  • 脂肪肝あり。
  • 腹水貯留あり。
症例36の動画解説

お疲れ様でした。

今日は以上です。

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