
症例19
【症例】80歳代女性
【主訴】下腹部痛
【現病歴】約8時間前より下腹部痛の出現あり、救急外来受診。
【既往歴】両側付属器切除
【身体所見】意識清明、下腹部正中に手術痕あり、その部位に一致して圧痛と反跳痛あり。腸蠕動音は亢進。
【データ】WBC 9300、CRP 0.15
画像はこちら
※冠状断像はこの濃度しか画像がありませんでした。
小腸の拡張、液貯留、ニボー像を認めています。
骨盤底に腸間膜の浮腫が目立つ腸管群を認めており、closed loopを形成している可能性があります。
closed loopを疑う腸管群を上下に追うと、3箇所でbeak signを形成していることが分かります。
やはりこの部位で、closed loopを形成していることが分かります。
正中部近くのbeak signは虚脱した腸管と連続しており、closed loopよりも肛門側の腸管だと分かります。一方で右側のbeak signは拡張した腸管と連続しており、口側の腸管だと分かります。
closed loopを形成している腸管に明らかな造影不良は認めていないように見えます。
診断:絞扼性腸閉塞
※外科コンサルトで緊急手術となりました。
~~~~~~~~~~~~~~~手術記録より抜粋~~~~~~~~~~~~~~~
腹水は血性であった。
子宮と直腸が癒着してヘルニア門を形成しており、ここに回腸末端から約100cmの部分の小腸が嵌頓しDouglas窩にはまり込んでいた。
嵌頓していた腸管は壊死していた。
壊死していた小腸は約15cmでこの部分を含めて血流の悪い小腸を約40cm切除した。
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CT上は明らかな造影不良は認めませんでしたが、壊死に陥っており、腸切除が行われました。
その他所見:
- 腹水貯留あり。
- 結腸憩室散見。
症例19の動画解説
お疲れ様でした。
今日は以上です。
今回の気づきや感想などを下のコメント欄にお願いします。

短いクローズド・ループは、追跡したかどうか、わからなくなることがあります。実際の読影では、追跡した腸管にマークをつけながら読影しています。
アウトプットありがとうございます。
>実際の読影では、追跡した腸管にマークをつけながら読影しています。
そんなことができるんですね。マークが付けられたら、同じところを追跡することはなくてよいですね。
腸閉塞ブートキャンプで慣れたおかげで、closed loopがあると所見が多いため見つけやすく、比較的易しめの症例に感じるようになってきました^^
アウトプットありがとうございます。
>比較的易しめの症例に感じるようになってきました^^
今回はclosed loopの範囲が短く難しいと思われる症例だったのですが、慣れてきましたかね。良かったです!
経験上closed loopを形成する腸管がとても短かったり、逆に形成する腸管がとても長い場合に見逃される事が多い気がするので、絞扼を示唆する所見の認識と共に根気強く腸管を追う癖を身につけたいです。
アウトプットありがとうございます。
>経験上closed loopを形成する腸管がとても短かったり、逆に形成する腸管がとても長い場合に見逃される事が多い気がする
確かにそうですね。今回のように短かったり、逆に長すぎる場合も気づきにくいかも知れません。
>絞扼を示唆する所見の認識と共に根気強く腸管を追う癖を身につけたいです。
そうですね。腸間膜の浮腫を有する腸管群を見つけて、複数のbeak signを探すことが最重要です。
短い距離のclosed loopでしたがbeak signがわかりやすかったです。いつもは薄切り欲しいなと思いますが・・・ありがとうございます。
アウトプットありがとうございます。
確かにthin sliceが欲しいくらいclosed loopの範囲が短いですね。
閉塞部はわかって腹水貯留や腸間膜の浮腫などもわかったのですが…
closed loopでいいのかがいつも自信を持てません
難しいですね
アウトプットありがとうございます。
今回は範囲が短かったので少し難しかったかもしれません。
>腸間膜の浮腫などもわかったのですが…
腸間膜の浮腫はclosed loopを示唆する所見です(そうでないことももちろんありますが)ので、この所見を認めた場合は「もしや・・・」と敏感になりましょう。
いつも貴重な症例ありがとうございます。
今回、CT上腸管の壊死を指摘できませんでしたが、
もしdynamicで撮影していた場合、虚血を指摘できていた可能性もあった、、と考えていいでしょうか?
いずれにせよオペという治療方針は変わらないと思うので平衡相のみでも十分かもしれませんが。
アウトプットありがとうございます。
>もしdynamicで撮影していた場合、虚血を指摘できていた可能性もあった、、と考えていいでしょうか?
いずれにせよオペという治療方針は変わらないと思うので平衡相のみでも十分かもしれませんが。
その可能性はありますね。早期相では造影不良を認めていたのかも知れません。
この講座をさせていただいているので、
腹水貯留→腸間膜の浮腫→
ビークサイン→ループ形成を早い段階で見つけることができました♂️
小さなクローズドループは
最初わからなかったですが、腸間膜の浮腫ありで、もしかしてと思い探すと、やっぱりありました…
この講座を受けなかったら
実際の検査では見逃していると思います…
あまり目立たない腸閉塞はこわいです
関係ないのですが、
この方腕頭動脈のbuckling
はありますでしょうか…?
アウトプットありがとうございます。
>小さなクローズドループは最初わからなかったですが、腸間膜の浮腫ありで、もしかしてと思い探すと、やっぱりありました…
今回は小さいので少し気づきにくかったかもしれませんが、おっしゃるように絞扼性腸閉塞を示唆する所見を複数認めています。
複数のbeak signは冠状断像の方がわかりやすいかもしれませんね。
>この方腕頭動脈のbucklingはありますでしょうか…?
ありますね。
胸部レントゲンがあれば同部が突出して見えると思います。
とても勉強なって現場でも直結する内容に感謝しております。
誠ながら勉強不足ですいませんが、
先生方がおっしゃる平衡相とは、何秒注入の、どのタイミングの時間なのか、教えて下さい。
dynamic撮影?
dearly 90s
dearly 180s
教えて下さい。
アウトプットありがとうございます。
一般的に急速注入後
平衡相:100〜140秒
遅延相:180秒〜
を指します。
(レジデントのための腹部画像教室P6)
今回はダイナミック撮影ではなく1相のみの撮影ですので、平衡相のみの撮影となります。
コメントは相変わらずレベルが高いですね。。個人的には解説を見ながらようやく所見を追えるレベルに感じました(・・;) beak signも、鈍角(?)だと気付きにくい気がしました。
アウトプットありがとうございます。
今回はclosed loopに陥っていた範囲が狭く少し難しかったかもしれません。
beak signなどはわかりにくい症例では3カ所以上の締め付け部位は細かく見ないと分からないですね。
その前にまずはこの腸管群がおかしいのでは?という違和感を抱けることが大事ですね。
今回の症例も腸間膜の浮腫を伴った腸管群は横断像よりも冠状断像でわかりやすいですね。
冠状断像の方がわかりやすい症例が結構ありますので、おかしいなと思ったら冠状断像での確認必須ですね。
本題とは関係ないのですが
58 / 135の肝臓S4にある
低濃度域は血管腫などの疑いでしょうか
アウトプットありがとうございます。
こちらは腹部TIPSでも出てきた限局的〇〇〇ですね。
こちらに取り組んでみて下さい。
https://imaging-diagnosis.com/view/dR8SWsKw
(腹部TIPS症例25)
ありがとうございます。
前にした覚えがあるのですがすっかり忘れてました…
もしこれが肝血管腫なら
平衡相でうっすらと造影剤で染まっているものでしょうか?
そうですね。典型的な血管腫ならば造影効果を認めています。(ただ典型的でない血管腫もあります)