
症例24
【症例】80歳代男性
【主訴】左側腹部痛、嘔吐
【現病歴】本日早朝より左腹部に痛みあり。昼頃嘔吐認めたため、救急要請。
【既往歴】直腸癌(Mile手術)、胆摘
【身体所見】意識清明、BT 35.9℃、BP 221/93mmHg、SpO2 97%(RA) 、腹部:左ストーマ周囲に限局性の腹部膨隆あり。 膨隆部自発痛・圧痛あり・軟。
【データ】WBC 7700、CRP 0.09
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それほど目立つわけではありませんが、小腸の拡張、液貯留、ニボー像を認めています。
閉塞機転はないでしょうか?
今回は、簡単ですね。
左腹部皮下に腸管の逸脱・嵌頓を疑う所見を認めています。
単純CTのみですので、虚血(造影効果)の程度についてはわかりませんが、ヘルニア水を認めており、嵌頓が疑われます。
腹壁瘢痕ヘルニアを疑う所見です。
なかでも、今回はストーマ(人工肛門)のすぐ横に逸脱腸管があり、このようなヘルニアを特に、傍ストーマヘルニアと言います。
診断:傍ストーマヘルニア嵌頓による小腸腸閉塞
※外科で手術となりました。嵌頓した腸管に壊死を認めず腸切除は行われませんでした。
その他所見:
- 胆摘後。
- 腎嚢胞あり。腎結石・腎石灰化あり。
- 直腸癌術後。
- 仙骨前に腫瘤あり。再発腫瘤の可能性あり。
症例24の動画解説
お疲れ様でした。
今日は以上です。
今回の気づきや感想などを下のコメント欄にお願いします。

ストーマ形成部からの脱出はあるあるなので名称がついているのですね。
腸管内腸液や周辺にヘルニア水が溜まっていると腸管壁が白く見えてしまうので、過剰に拾って虚血所見と混同しないよう気をつけます。
アウトプットありがとうございます。
>ストーマ形成部からの脱出はあるあるなので名称がついているのですね。
ですね。腹壁瘢痕ヘルニアなどと比べるとマイナーですが、名前がついています。
>腸管内腸液や周辺にヘルニア水が溜まっていると腸管壁が白く見えてしまうので、過剰に拾って虚血所見と混同しないよう気をつけます。
そうですね。今回のように単純CTしかない場合は、安易に出血性梗塞などとは判断してはいけませんね。
この場合は症例1で見たように壁が肥厚して高吸収に見えることが多いのでその点も参考にしましょう。
腹壁瘢痕ヘルニア(ストーマ側方からの小腸脱出)としましたが、「傍ストーマヘルニア嵌頓」と言うのですね。
副所見で「直腸付近の不整影」も所見としましたが、再発腫瘤を疑う所見でよかったのですね。今回は腸閉塞のコーナーですが、実臨床では術後のフォローも大切にしたいです。
アウトプットありがとうございます。
>腹壁瘢痕ヘルニア(ストーマ側方からの小腸脱出)としましたが、「傍ストーマヘルニア嵌頓」と言うのですね。
腹壁瘢痕ヘルニア(ストーマ側方からの小腸脱出)でもよいです。
>副所見で「直腸付近の不整影」も所見としましたが、再発腫瘤を疑う所見でよかったのですね。今回は腸閉塞のコーナーですが、実臨床では術後のフォローも大切にしたいです。
仙骨前のものですね。
再発腫瘤を疑う所見ですね。
おっしゃるように腸閉塞だけでなく、術後の再発の有無のチェックも重要ですね。
また特に、結腸の腸閉塞の場合は、腫瘍の有無や転移の有無の確認も重要でしたね。
腹腔内の拡張した小腸がひと繋がりでなく、ビークサインが腹腔側に3ヶ所、ヘルニア側に2ヶ所あるように見えてしまって、
「小腸が2ヶ所脱出している?」「外ヘルニア以外に、バンドでの絞扼があるのか?」など悩んでしまいました。
腹腔内の拡張小腸は、ひと繋がりなんでしょうか?
(本題とは無関係ですが、
水平断29-32/93、矢状断27/86に傍乳頭憩室ありますでしょうか)
アウトプットありがとうございます。
腹腔内の拡張小腸はひと繋がりではありません。
動画内でsmall bowel feces signと申し上げていますが、本来は閉塞機転の手前に認める際に使う表現で、今回は小腸内にたまたま糞便構造を認めているだけで閉塞機転を示唆するわけではないので、small bowel feces signという表現はよろしくないかもしれません。
難しくはなかったですが、何て言えばいいんだろう、と悩みました。これも腹壁瘢痕ヘルニアの一瞬なんですね。
アウトプットありがとうございます。
そうですね。ストマを作成した部位にあるので、傍ストーマヘルニアと呼ばれることが多いですのでそちらも併せて覚えておいていただけたら幸いです。