
症例32
【症例】40歳代 女性
【主訴】上腹部痛、嘔気・嘔吐
【現病歴】約9時間前頃から急に上腹部痛、嘔気、嘔吐が出現。改善しないため救急要請。
【既往歴】子宮頚癌(広汎子宮全摘術、放射線療法)、腸閉塞
【身体所見】腹部:平坦、軟、腸雑音亢進、上腹部を中心に腹部全体に圧痛あり。
【データ】WBC 8400、CRP 0.03
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小腸の拡張、液貯留、ニボー像を認めています。
閉塞機転はないでしょうか?
下腹部にsmall bowel feces signあり、同部の肛門側に閉塞機転があることがわかります。
横断像ですと、ちょっと閉塞機転となっていることがわかりにくいですね。
閉塞機転の様子は、今回の症例では横断像や冠状断像よりも矢状断像でわかりやすいですね。
beak signを認めています。
手術歴があり、癒着による腸閉塞が疑われます。
診断:癒着性小腸閉塞
※保存的に加療され、退院となっています。
その他所見:
- 腹水貯留あり。
- 子宮付属器切除後。
- 左下大静脈あり。
症例32の動画解説
お疲れ様でした。
今日は以上です。
今回の気づきや感想などを下のコメント欄にお願いします。

「small bowel feces sign」があると、閉塞部位が確認しやすく助かります。ほとんどの症例で見かける感じですが、どの程度の頻度で認めるのしょうか?
アウトプットありがとうございます。
>「small bowel feces sign」があると、閉塞部位が確認しやすく助かります。
このブートキャンプを作る際にたくさんの症例を見ましたが、本当に改めて役立つサインだと私自身痛感しています。
>ほとんどの症例で見かける感じですが、どの程度の頻度で認めるのしょうか?
どの程度かという具体的な割合はわかりませんが、たまに認めないものもあったり、閉塞機転でないところに認めている症例もあります。
閉塞機転でないところに認めていても、閉塞機転直前がやはり中でも目立ちますね。
small bowel faced signとbeakを見つけてclosed loopと決めつけてしまいました。癒着性イレウスだったんですね。放射線治療後ということもあり癒着の原因が放射線治療か気になりましたが付属器切除も行っているのですね。後で見直すと確かにclosed loopにはなっていないようですが、closed loopになっていないことを確認するには、①小腸を口側から閉塞点まで追う。②バウヒンから閉塞点まで追う。③ ①と②の閉塞点が同一
③が成立しなければならないように考えており、見るのがやたら大変です。コツはございますか?ありがとうございました。
アウトプットありがとうございます。
>closed loopになっていないことを確認するには、①小腸を口側から閉塞点まで追う。②バウヒンから閉塞点まで追う。③ ①と②の閉塞点が同一 ③が成立しなければならないように考えており、見るのがやたら大変です。コツはございますか?
小腸は拡張している場合は追うことができますが、虚脱している場合は通常追うことは困難です。
ですので、これまで見てきたようにclosed loopを疑う所見がないか、どの部分がclosed loopになっているのかを同定してから、closed loopと診断しなくてはいけません。
ヒントとなる所見はいろいろありますが、中でも
・腸間膜の浮腫が目立つ腸管群
・2箇所以上のbeak sign
を探すのが手っ取り早いと思います。
他の方もおっしゃる通りsmall bowel feces signはすぐに気づいて、閉塞起点のヒントになるのであるとありがたいですね!
アウトプットありがとうございます。
ほんとにありがたいサインです(^^)
beak signの本数と、腸間膜浮腫の弱さが癒着性を思わせる手助けとなりました^^
アウトプットありがとうございます。
>beak signの本数と、腸間膜浮腫の弱さが癒着性を思わせる手助け
さらっと書いておられますが、非常に重要な点が盛り込まれています。
閉塞機転として「small bowel feces sign」は見つけることができました。癒着が原因かどうかについてはジジ様のコメントを見てなるほどと思いました。
勉強になります。ありがとうございます。
一点質問ですが、この方下行結腸が追いにくいなぁという印象でしたが、これは単に拡張していない小腸と重なっていて見えにくいだけということでよろしいでしょうか(なんだか左側がグチャグチャしていて・・よくわかりませんでした)。
アウトプットありがとうございます。
下行結腸追ってみました。
ご対応いただきありがとうございました。
一応自分でも追ってみた(造影の方ですが)のと合っていて答え合わせができました。虫垂同定ブートキャンプみたいになってしまいお手数をおかけしました。。
年内最後の症例配信ありがとうございます。
small bowel faces sign、頼りになりますね。いつも腹部CTはaxial、coronalでお願いするのでsagittalは普段見ないのですが、今回の症例はsagittalで何とかbeak signを見つけられました。気持ちよく一年の締めくくりができたようです。副所見ですが、左下大静脈でしょうか。
来年もよろしくお願いいたします。
みなさん、よいお年を
アウトプットありがとうございます。
>いつも腹部CTはaxial、coronalでお願いするのでsagittalは普段見ないのですが、今回の症例はsagittalで何とかbeak signを見つけられました。
私も同様です。通常横断像、冠状断像で事足りるのですが、たまに矢状断像が非常に見やすいことがありますね。
>副所見ですが、左下大静脈でしょうか。
たしかに・・・・。追記します。ありがとうございます。
今年もよろしくお願いいたします。
ここにきて頻出症例ですが、他のイレウス「でない」ことを確認でき、力がついてきたな、と少し実感しています。
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ついに、先生もかかってしまいましたか・・・巷でもまた増えてきていますので、どうかご自愛ください。
アウトプットありがとうございます。
>ここにきて頻出症例ですが
腸閉塞では一番多いタイプですね。このあたりをサクサク診断したいところですね。
>メルマガ
ありがとうございます。もう元気ピンピンです。先生もお気を付け下さい。