
症例33
【症例】70歳代 女性
【主訴】心窩部痛
【現病歴】延髄病変の精査・加療にて神経内科入院中。本日より心窩部痛あり。
【既往歴】虫垂炎
【身体所見】右下腹部を中心に圧痛と反跳痛あり。
【データ】WBC 10900、CRP 0.02
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小腸の拡張、液貯留、ニボー像を認めています。
閉塞機転はないでしょうか?
右腹部に腸間膜の浮腫が目立つ腸管群を認めています。
このような所見を見た際に考えなければならないのが、同部でclosed loopを形成し、絞扼性腸閉塞を来している可能性です。
同部の腸管を追うと、beak signを認めており、虚脱した腸管と連続性があります。
冠状断像を見てみましょう。
右腹部にC字状の腸間膜の浮腫が目立つ腸管群を認めています。
closed loopを疑う所見です。
3つのbeak signと虚脱した肛門側の腸管、拡張した口側の腸管、closed loopの関係がよく分かります。
診断:絞扼性腸閉塞
※外科で手術となりました。手術の結果、大網と小腸間膜が癒着してバンドを形成しておりそこに腸管が入り込んでいました。腸管壊死は認めておらず腸切除は行われていません。
その他所見:
- 動脈硬化あり。
- 石灰化子宮筋腫あり。
- 少量腹水あり。
- 腰椎に変形性脊椎症あり。
症例33の動画解説
お疲れ様でした。
今日は以上です。
今回の気づきや感想などを下のコメント欄にお願いします。

腸管膜の濃度上昇がはっきりしていたので、クローズド・ループを疑いやすかったです。
アウトプットありがとうございます。
>腸管膜の濃度上昇がはっきりしていたので、クローズド・ループを疑いやすかった
おっしゃるとおりです。
腸間膜の浮腫を有する腸管群こそがclosed loopを疑うきっかけとなります。
Axではwhirl signにも見え、互いにねじれてclosed loopを形成しているようにも見えましたが、Corだと捻れではなく嵌まり込んでいる様子がわかりやすかったです。
アウトプットありがとうございます。
>Corだと捻れではなく嵌まり込んでいる様子がわかりやすかったです。
ですね。
横断像で分かりにくいときは、あれこれ腸管を追うよりは、冠状断像や矢状断像を見ると一目瞭然!となることが割とあるのがclosed loopですね。
その点、虫垂の同定に似ているといえますね。
前症例で解説いただいた内容がまさに今回出てきました。ある時は解るのですが閉塞性イレウスの時の方が自分の能力では慎重にならないといけないと思っています。手術か保存か変わる可能性があるので慎重に見ていきたいです。ありがとうございました。
アウトプットありがとうございます。
>前症例で解説いただいた内容がまさに今回出てきました。
ですね(^^)
「腸間膜の浮腫が目立つ腸管群」をきっかけに前後の腸管を追うようにしましょう。
いつも勉強になっております。
まず、大事な腸間膜の浮腫を記載するのを忘れてしまいました。。まだまだ、慎重に見ないといけません。
時に、こちらの患者さんは女性ですね・・
症例には男性と記載がありまして、ご確認いただけますでしょうか。
アウトプットありがとうございます。
closed loopに気づけたならば腸間膜の浮腫については記載はしなくてもよいかもしれませんね。
腸間膜の浮腫がclosed loopを疑う上で実は非常に重要な所見であることを知っているのは、ここのメンバー+αくらいかもしれませんので(半分冗談で半分本音です)。
>症例には男性と記載がありまして、ご確認いただけますでしょうか。
すいません。女性です。修正しました。
腸管膜浮腫や3か所のbeak signから絞扼性腸閉塞を疑うことが出来ました。
確認ですが造影CTはされなかったのでしょうか?(緊急手術という治療方針には影響しないため?)
また症例は女性ではないでしょうか。
アウトプットありがとうございます。
>腸管膜浮腫や3か所のbeak signから絞扼性腸閉塞を疑うことが出来ました。
完璧ですね(^^)
>確認ですが造影CTはされなかったのでしょうか?(緊急手術という治療方針には影響しないため?)
確認しましたが、やはり造影はされていません。
そのまま外科コンサルトとなり緊急手術となっています。
>また症例は女性ではないでしょうか。
すいません。女性でした。修正しました。
いつも勉強させていただいています。Closed loopやbeak signはだいぶ分かるようになってきたのですが、そこから「しれーっと」出ていく虚脱した腸管がなかなか指摘できず、まだまだです。
アウトプットありがとうございます。
>Closed loopやbeak signはだいぶ分かるようになってきたのですが、そこから「しれーっと」出ていく虚脱した腸管がなかなか指摘できず、まだまだです。
Closed loopやbeak signがわかれば十分なのですが、虚脱した肛門側腸管も同定できればより良いですね。
ただしおっしゃるように虚脱しており「しれーっと」出ていくので同定が難しいことがありますね。
腸管内容物に高吸収の部分があるのは直前にバリウムを受けられたからでしょうか。出血にしては高吸収過ぎます。
アウトプットありがとうございます。
これは便でよさそうです。これくらいの高吸収な便はたまに見かけます。
バリウムならばもっと高吸収でアーチファクトを引くのが通常です。
こちらは検査後時間が経過したバリウムですがそれでもこれくらい高吸収となります。
https://imaging-diagnosis.com/view/gS5hEja4
今回は閉塞起点は比較的容易でしたが、closed loopが今一つ分かりませんでした。
というより、やっぱり個人的には腸閉塞所見の中でこれが一番難しい気がしています。
closed loopブートキャンプのつもりで取り組んでみます。。
アウトプットありがとうございます。
>今回は閉塞起点は比較的容易でしたが、closed loopが今一つ分かりませんでした。
今回も横断像よりは冠状断像がわかりやすかったですね。
腸間膜の浮腫がclosed loopを疑うきっかけとなります。
>closed loopブートキャンプのつもりで取り組んでみます。。
腸閉塞ブートキャンプはある意味、closed loopブートキャンプですね。
EGJ付近の食道壁肥厚は所見としては取らない程度でしょうか?
アウトプットありがとうございます。
確かに少しここだけ目立ちますね。所見として必ず取らないといけないものではないと考えますが、取ってフォローや精査してもよいかもしれません。
ただ今回は腸閉塞が間違いなくありますので、そちらを優先して術後フォローで比較などですね。