
症例38
【症例】70歳代 男性
【主訴】腹痛・嘔吐
【現病歴】昨晩より、嘔吐・腹痛あり。今朝になっても嘔吐あり。来院。
【既往歴】心臓バイパス手術、開腹胆摘、腸閉塞
【身体所見】BP 107/71mmHg、HR 116/min、腹部:平坦、軟、下腹部に軽度圧痛あり。反跳痛なし。
【データ】WBC 15100、CRP 0.32
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広範な小腸の拡張、液貯留、一部ニボー像を認めています。
閉塞機転はないでしょうか?
今回の症例では、small bowel feces signははっきりしません。
また外ヘルニアを疑う所見もなく、拡張腸管をひたすら追うしかありません。
ただし、閉塞機転を探すのは割と簡単で、腹部正中やや右側で急に腸管が細くなっています。
同部に癒着や索状物による狭窄が疑われます。
診断:癒着性腸閉塞
※保存的に加療され、退院となっています。この症例も症例35のように肛門側の腸管が全腹壁にへばりついているように見えます。開腹による胆摘後であり、正中創に沿って癒着を認めていることが考えられますが、手術は施行されておらず癒着の有無は定かではありません。
その他所見:
- 開胸術後。
- 肝嚢胞あり。
- 動脈硬化あり。
症例38の動画解説
お疲れ様でした。
今日は以上です。
今回の気づきや感想などを下のコメント欄にお願いします。

冠状断で臓器軸性にwhirl signを呈しているように見えるのですが、臓器軸性小腸捻転の可能性はないのでしょうか?
アウトプットありがとうございます。
癒着関係なくあの部分だけが捻転しているという可能性は低いと考えます。
やはり癒着があってだと思います。
癒着と言い切るのは勇気がいりますが、病歴などもそれらしいと助かりますね
アウトプットありがとうございます。
手術歴がなくても癒着のことはありますが、あればより疑いますね。
いつもありがとうございます。
SMAとSMVの径が同じくらいかややSMVの方が小さいスライスもあり、Smaller SMV signありと判断したのですが今回程度なら有意な所見ではないのでしょうか?
アウトプットありがとうございます。
そうですね。確かに同じくらいに見える部位はありますが、脱水でもSmaller SMV signは認めることがありますので、NOMIやSMA塞栓などSMA領域の血流が少なくなるような病態を疑う所見がある場合に有意となります。
今回は腸管拡張は認めますが、腸管壁がペラペラになったり、あるいは肥厚したり、腸間膜の浮腫を疑うような所見は認めていないので、有意ではないと考えられます。IVCもどちらかというと虚脱していますし。
いつも勉強になる症例ありがとうございます。今回は既往に加えsmall bowel feces signや腸間膜の肥厚なく腹水も出現していないこと、beak signが1か所であることから癒着性腸閉塞を考えることが出来ました。
再発予防については例えば腹腔鏡下腸管癒着剥離術が保険収載されていますので、検討するのもよいかもしれませんね
アウトプットありがとうございます。
>今回は既往に加えsmall bowel feces signや腸間膜の肥厚なく腹水も出現していないこと、beak signが1か所であることから癒着性腸閉塞を考えることが出来ました。
正答できたということでよかったです(^^)
癒着であってもsmall bowel feces signは出現しうるのでその点はご注意ください。
>腹腔鏡下腸管癒着剥離術が保険収載されていますので、検討するのもよいかもしれませんね
そうなんですね。
再発を繰り返すようならば検討しても良いのかもしれません。
補足ありがとうございます。
ものすごく久しぶりに(鼠径ヘルニアを除いては初めて?)閉塞起点がわかりました。苦節38例目にしてやっとかよ!!!!と言わないでくださいね(笑)ですので、みなさんの秀逸なコメントに圧倒されています。
でも、whirl signっぽいかなあとか思ってしまいました。
まだまだまだまだ。。。「道半ば」どころか、道に入ってすらいない??
ぼちぼち、頑張ります!!
追記
神のような女性がいてよかったです!!お気持ちわかります!!
アウトプットありがとうございます。
閉塞機転同定されたようで良かったです!
>でも、whirl signっぽいかなあとか思ってしまいました。
渦巻状にも見えますので、whirl signという表現を用いてもよいと思います。
>追記
PTAの会長の件ですね。胃がキリキリするような1週間でしたので、ホッとしています。
会合では4人のうちの1人の男性が自分が選出されたことに大変憤慨されており、「こんな選び方しても誰もやりませんよ!今の会長がそのまま会長やったらいいじゃないですか」と謎理論を展開しはじめて、凍り付いた会合でした。。。
おかげで立候補する気はないということは言いやすくなりましたが。
神女性はそこではやるとは言わず、帰宅後に立候補されたそうです。
いつもありがとうございます。冠状断で、拡張した腸管を追って行き、18/43で急に細くなりビークサインがあることはわかりました。
その周辺を探すと14/43でも細くなる腸管が上下に2ヶ所あり、特に頭側の先細り腸管は8/43の拡張腸管へ続きました。そのためビークサインが3ヶ所あると考えました。横断像では他2ヶ所がどこかわかりませんでしたが、ビークがあるので絞扼性と考えてしまいました。
保存的治療で良くなられて良かったですが、さて自分の読み方はどこがだめだったのかと考えたのですが、よくわかりません。冠状断14の先細りをビークととらえてはいけなかったということなのだと思いますが、先細りをビークでないと言うのは、自分には高いハードルです。
アウトプットありがとうございます。
>冠状断で、拡張した腸管を追って行き、18/43で急に細くなりビークサインがあることはわかりました。
おっしゃるように冠状断像では同部にbeak signを認めています。
>その周辺を探すと14/43でも細くなる腸管が上下に2ヶ所あり、特に頭側の先細り腸管は8/43の拡張腸管へ続きました。
こちらはともに腹壁に癒着している腸管を見ていると考えられます。
そのためbeak signに続きますが、こちら(14/43)は細いままですのでbeak signではありません。
絞扼性の場合は3カ所認めることも重要ですが、腸間膜の浮腫も重要な所見です。今回は浮腫はわずかに認めているのみです。
また、絞扼性の場合は逸脱した腸管群が固まりで冠状断像などで認めることが多いですが、今回はそういった腸管群は認めず、冠状断像では全体的に腸管が拡張しています。
それらからも絞扼性っぽくはないと予測することがdけいます。
>先細りをビークでないと言うのは、自分には高いハードルです。
細いものがビークではなく、拡張した腸管が急に終わるところがビークです。
拡張した腸管と虚脱した腸管の移行部であり、管腔径差(caliber change)とも呼ばれます。
14/43の上下の細い腸管を
背側に追うと、上側の細い腸管は18/43のところで急に拡張した腸管と連続しており、ビークサインと言えます。下側の腸管は細いままですので、ビークサインではありません。
腹側に追うと、上下の細い腸管ともに9-10/43あたりで腸管に連続していますがこちらは拡張した腸管とはいえず、ビークサインではありません。
おそらく腹壁と癒着している部分が数カ所であるため、細く見える部分がありますが、閉塞機転となっているのは1カ所のみです。
癒着している部分が数カ所あるため、癒着と癒着の間で腸閉塞を来していない腸管があたかもclosed loopに見えたのだと思います。そういう意味では少し難しい症例とも言えます。
連休中に失礼します。丁寧にご説明くださいましてありがとうございました。冠状断9/43あたりを拡張した腸管ととらえてしまったことが一因のようです。ビークとはキャリバーチェンジのことと講座終了直前でしたが確認できて良かったです。絞扼性らしいかどうかのポイントも。講座終了後これらの点をもう一度最初から見直して確認します。ありがとうございました。
>冠状断9/43あたりを拡張した腸管ととらえてしまったことが一因のようです
そうですね。ここはbeak signのように一見見えるかも知れませんが拡張は認めていません。
>絞扼性らしいかどうかのポイントも。講座終了後これらの点をもう一度最初から見直して確認します。
是非確認ください。キーワードは逸脱した腸管群、腸間膜の浮腫あとは3つのbeak signですね。
もちろん単純CTで高吸収であったり、造影不良であったり、腹水貯留なども重要ですが。