
症例40
【症例】90歳代女性
【主訴】腹痛・嘔吐
【現病歴】 食欲低下、嘔吐があり昨日他院受診。肺炎と診断され入院となる。入院後より腹部全体に圧痛あり。胃管留置され経過みていたが、症状持続するため、当院転院となる。
【既往歴】胸椎圧迫骨折、胆石症
【身体所見】腹部:中央に激痛あり、圧痛あり、反跳痛不明
【データ】WBC 17100、CRP 18.82
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他院CT
翌日当院CT
下腹部正中部に腸間膜の浮腫を伴った腸管群を認めています。
また一部腸管は3層構造を保った壁肥厚があるように見えます。
このような所見を認めた場合に考えなければならないのが、同部でclosed loopを形成しているということでした。
閉塞機転はないでしょうか?
拡張腸管を追うとbeak signを認めていることがわかります。
次に冠状断像見てみましょう。
やはり横断像よりも冠状断像で腸間膜の浮腫を有する腸管群がわかりやすいですね。
冠状断像でもbeak signを確認することができます。
他院にて肺炎と診断され、入院加療されていましたが、この時点でも絞扼性腸閉塞と診断できます。
診断:絞扼性腸閉塞
翌日当院のCTを次に見てみましょう。
腸間膜の浮腫およびclosed loopを疑う所見は残存しており、3層構造を保った壁肥厚がより明瞭化しています。
腸管壁の明らかな造影不良は認めていません。
※外科にて緊急手術となりました。横行結腸間膜と小腸が癒着しバンドを形成してました。腸管壊死は認めておらず、腸切除は行われませんでした。
その他所見:
- 膵尾部嚢胞あり。主膵管拡張あり。
- 胆石あり。
- 腹水貯留あり。
症例40の動画解説
全40症例お疲れ様でした。
腸・閉・塞ブートキャンプは以上となります。
今回の気づきや感想などを下のコメント欄にお願いします。

最後の症例は読めたような気がしますが、これも40症例も繰り返した賜物だと思います。
腹部救急の最初の頃は本当に全然読めませんでした。
オリンピックの選手たち同様に、先生もこれだけの症例を集め、文字・動画解説をし、アップロードする継続力には脱帽ですし、感謝しかありません。
とてもとても勉強になっております。
決してお体に無理のない範囲で、これからも素晴らしいコンテンツを発信されることを心から応援しています!
腸閉塞ブートキャンプありがとうございました. (_ _)
アウトプットありがとうございます。
>最後の症例は読めたような気がしますが、これも40症例も繰り返した賜物だと思います。
最後は口側の腸管が拡張していないため少し分かりにくかったかも知れませんが、冠状断を見ると明らかですね。
>とてもとても勉強になっております。
決してお体に無理のない範囲で、これからも素晴らしいコンテンツを発信されることを心から応援しています!
そのように言っていただきありがとうございます。
また新しいコンテンツができましたら紹介させていただきます。
40症例お疲れ様でした。
腸管が浮腫状に肥厚すると、造影効果の判断が難しい場合があります。
肥厚した腸管の粘膜の造影効果に注目して判断すればよろしいでしょうか?
アウトプットありがとうございます。
>腸管が浮腫状に肥厚すると、造影効果の判断が難しい場合があります。
そうですね。今回も左右の腸管で造影のされ方が異なりますね。
右側は粘膜、漿膜下層の染まりが目立ち、左側は粘膜のみの染まりが目立ちます。
>肥厚した腸管の粘膜の造影効果に注目して判断すればよろしいでしょうか?
そうですね。粘膜の造影効果に着目して判断で大丈夫だと考えます。
この症例で最後ですか?残念です。
closed loopはあると思ったのですが、他院のCTから1日様子を見ていたので緊急手術症例ではないのかと疑いましたがやはりclosed loopしかないと思えたのもこのレクチャのおかげだと思います。オリンピックコメントありましたが先生もたくさんの症例集めから解説作成まで本当に大変だったと思います。ありがとうございました。
アウトプットありがとうございます。
>やはりclosed loopしかないと思えたのもこのレクチャのおかげだと思います。
よかったです(^^)
慣れたらclosed loopは割とワンパターンであることがわかりますね。
>オリンピックコメントありましたが先生もたくさんの症例集めから解説作成まで本当に大変だったと思います。ありがとうございました。
こちらこそ40症例もお付き合いいただきありがとうございました!
派手な所見なのですぐに悪そうとは思えますが、ちゃんとclosed loopを指摘するのは少し難しい気もしました。一つ一つ丁寧に所見を拾えば診断できるのだと勉強になりました。
40問ありがとうございました。最近も腸閉塞の方の救急症例でclosed loopを指摘して外科の先生に手術していただけました。間違いなくこのレクチャーのおかげです。ありがとうございました。
アウトプットありがとうございます。
>ちゃんとclosed loopを指摘するのは少し難しい気もしました。
冠状断像だと一目瞭然なのですが、横断像だと少し気づきにくいかも知れません。
>最近も腸閉塞の方の救急症例でclosed loopを指摘して外科の先生に手術していただけました。
それはよかったです!この講座を作った甲斐があります。
「なんかイレウスあります」
で外科の先生に引き継ぐのと、
「ここでclosed loopを形成しており、絞扼性腸閉塞が疑われます」
で引き継ぐのでは雲泥の差ですね。
内ヘルニアによる絞扼性小腸閉塞症の診断で、最後の症例もしっかり味わうことができました。
腸・閉・塞ブート、頭部、胸部、腹部画像診断と多くの症例にあたって画像診断能力が受講前に比べ大幅に上がったと実感しております。
業務の合間での問題作成等大変かとは思いますが、新作の完成を楽しみに待ちながら日々の診察にあたろうと思います。
ありがとうございました。またよろしくお願いいたします。
アウトプットありがとうございます。
>内ヘルニアによる絞扼性小腸閉塞症の診断で、最後の症例もしっかり味わうことができました。
よかったです。
最後の最後でもきっちり地雷を置いてくるのを楽しんでいただけて何よりです。
>腸・閉・塞ブート、頭部、胸部、腹部画像診断と多くの症例にあたって画像診断能力が受講前に比べ大幅に上がったと実感しております。
そのように言っていただき大変ありがたいです(^^)
>業務の合間での問題作成等大変かとは思いますが、新作の完成を楽しみに待ちながら日々の診察にあたろうと思います。
(°°;)
常に何かしらのコンテンツを作ろうと合間に手を動かしていますが、新作はだいぶ先になりそうです。
首を長くしてお待ちいただければ幸いです。
膨大な時間と手間をかけて頂き、たくさんの症例提示と詳細な解説をして頂きました。ただただ感謝です。
膀胱壁が破綻し、腹腔内に貯留した体液量が増加しています。さらに膀胱内にairが貯留してます。iatrogenicなものでしょうか?
アウトプットありがとうございます。
40症例お疲れ様でした。
>膀胱壁が破綻し、腹腔内に貯留した体液量が増加しています。さらに膀胱内にairが貯留してます。iatrogenicなものでしょうか?
もともと他院のCTにおいても腹水は認めています。(93 / 157あたりに虚脱した膀胱を腹水の背側に認めています)
膀胱内のairはバルーンを入れる際にしばしば認めます。(今回は少し目立ちますが)
バルーン留置により膀胱が虚脱し、造影剤があたかも膀胱壁破綻しているように見えるかも知れませんが恐らく破綻はしていないと考えられます。
最後の最後もclosed loopに足をすくわれてしまいました。。
結構間違いだらけで、3歩進んで4歩さがるような日々で、復習がいるな、と思いました。
ただ、実際の症例はこれよりも読みやすいものが多いので、実臨床にはすでに相当なプラスになっています。
貴重な40症例、ありがとうございましたm(__)m
アウトプットありがとうございます。
>3歩進んで4歩さがるような日々
いえいえ、それでも1歩進んでるので大丈夫ですと書こうと思ったら、後退しているじゃないですか(^_^;
closed loopは難しいこともありますが基本はワンパターンです。
腸管壁肥厚や腹水貯留、造影不良なども大事ですが、腸間膜の浮腫を伴う腸管群らしきものに気づけるかが個人的には重要だと考えています。
そしてその発見には横断像よりも冠状断像がしばしば有用です。
腸閉塞のみでなく、麻痺性イレウスの症例やアニサキス症例など多岐に渡り提示させていただきました。
是非復習していただけると幸いです。
40症例お疲れ様でした。
追伸です。
昨日、ちょうど絞扼性イレウスの患者さんがきて、closed loopを指摘して適切に対処できました!勉強した症例でも多かったように、腹部所見もL/Dも大したことがなかったので、ブートキャンプ前であれば、保存的に経過観察(確率ゲーム)とするところでした(・・;)
画像の勉強もそうですが、胃膨満がなくとも、L/Dに変化がなくても、絞扼性の可能性があるということを自然に学べていた(このことは昨日まで気付きませんでした)ので、少なくとも1歩は前進しているんだな、と感じました!
ありがとうございました!
嬉しい報告ありがとうございます。
この講座が少しでもお役に立てて良かったです(^^)
いろいろな症例を見ることが本当に大事と痛感しました。
読影能力は一向に進歩している気がしませんが、経験値分だけ向上しているかもしれません。暇なときに復讐したいと思います。
アウトプットありがとうございます。
>読影能力は一向に進歩している気がしませんが
週に1症例だとだれてしまいましたかね・・・。(;゚ロ゚)
是非まとめて復讐していただけたら幸いです。
横から失礼しますm(_ _)m
「復讐」という言葉に、ただならぬ意欲を感じざるをえませんでした!!
私も精進します!
他院CT、横断像54枚目で左腹壁隣の小腸内に高吸収の結石のような像を認めますが、これは何になりますでしょうか
アウトプットありがとうございます。
憩室内の糞石や、憩室でなければ内服薬がここまで見えるということも考えられます。
出血とすると高吸収すぎますね。造影CTの早期相での造影剤漏出像(extravasation)としてはこれくらい高吸収なこともありますが、今回は単純CTですし。
最後の症例、所見を正しく指摘することができて、成長が感じられました!
たくさんの貴重な症例の解説、ありがとうございました。
2年ほど前のいまの時期にESPRESSO胸部救急を開始して以来、いつも何かしらのコースを受講していたので、全部終わってしまい、ちょっと寂しくなります。また新しいコースができるのを楽しみにしています!
アウトプットありがとうございます。
一通りご参加いただということでありがとうございます。
新しい講座は現状未定ですが、また何か新しい企画も考えていきたいと思います。
40症例お疲れ様でした!
たくさんの症例、ありがとうございました!
消化器専門でありながら腸閉塞の読影がずっと苦手でしたが、これだけやったので自分もさすがに最近は割とすらすら読めるようになり、ここのところはほぼ全問正解できていました(最初からそうであれよ自分)。
今回も、層構造を保った壁肥厚(浮腫)と腸間膜うっ血所見、そして複数ありそうなbeak signから、closed loopを伴う小腸閉塞だね!と割とすぐ思えました!
思えたのですが・・・
これまでのEspressoの経験上、最終症例はきっといろんな病態が絡んだ一ひねりも二ひねりもある問題に違いない!という気がしたのと、新しいCTでloop内の腸管にあまり拡張や緊満がないことや、古い方のCTでsmaller SMV signがありそうなこと、腹部激痛とわざわざ書いてあるあたりから、SMA血栓症(の解除後?)とかやや限局したNOMIかなとか、余計なことを考えてミスってしまいました…。
このあたりの所見についてはいかがでしょうか?
アウトプットありがとうございます。
40症例お疲れ様でした。
>ここのところはほぼ全問正解できていました
素晴らしいです!
>これまでのEspressoの経験上、最終症例はきっといろんな病態が絡んだ一ひねりも二ひねりもある問題に違いない!
いえいえ、今回は最後はきっちり基本に忠実に地雷を埋めました(^_^;
>SMA血栓症(の解除後?)とかやや限局したNOMIかなとか、余計なことを考えてミスってしまいました…。
腹部救急に参加されていたら見直して欲しいのですが、これらの場合は動脈血が途絶えますので、腸管が今回のように3層構造を保った壁肥厚を認めず、壁が元気なくペラペラになるpaper thin wallが特徴の1つでした(そうでないケースもあると思いますが)。最終的には造影CTを撮影しないとなかなか厳しいのですが、そういった所見は今回認めていません。
またsmaller SMV signはおっしゃるように今回認めていますが、高齢者の脱水(IVCも虚脱ありますね。)でもしばしば認めるため取り過ぎ注意ですね。