腸・閉・塞ブートキャンプ 症例3

症例3

【症例】 70歳代男性
【主訴】右鼠径部腫瘤、疼痛
【現病歴】本日朝より上記主訴あり、受診。
【既往歴】膀胱癌にて膀胱全摘、両側尿管皮膚瘻
【データ】WBC 5600、CRP 0.56

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小腸の拡張、液貯留、ニボー像を認めています。

閉塞機転はありますでしょうか?

今回は主訴からも見つけるのは簡単ですね。

右鼠径部に腸管の逸脱を認めており、嵌頓が疑われます。

ただし、壁の造影効果は保たれているように見え、明らかな虚血はなさそうです。

周囲にはヘルニア水を疑う液貯留を認めています。

 

ヘルニア水とは?

腸管が外ヘルニアとして嵌頓する
→静脈閉塞のためにうっ血がおこる
→血管壁の透過性が高まり浮腫となる
→腸管外へ液体が漏出する
→ヘルニア嚢に液体が貯留する。

この液体をヘルニア水といいます。

ですので、嵌頓が起こって静脈閉塞が起こっている事を示唆する所見とされます。

 

 

診断:右鼠径ヘルニア嵌頓による小腸閉塞

 

で、よいのですが、内鼠径ヘルニアなのか外鼠径ヘルニアなのかもチェックしてみましょう。

この鑑別には下腹壁動静脈に着目するのでした。

  • 下腹壁動静脈の内側にヘルニア門がある→内鼠径ヘルニア
  • 下腹壁動静脈の外側にヘルニア門がある→外鼠径ヘルニア

となるのでした。

今回ちょっとわかりにくいかもしれませんが、下腹壁動静脈を探してみましょう。

すると、下腹壁動脈の外側にヘルニア門がありますので、外鼠径ヘルニアと診断できます。

 

診断:右外鼠径ヘルニア嵌頓による小腸閉塞

 

※ヘルニア解除術が施行されました。壊死腸管は認めておらず、腸切除は行われませんでした。

関連:

その他所見:

  • 右胸膜石灰化あり。
  • 右腎嚢胞あり。
  • 左尿管ステント留置あり。
  • 腰椎側弯あり。
症例3の動画解説

下腹壁動静脈の解剖について

お疲れ様でした。

今日は以上です。

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