
症例11
【症例】 60歳代男性
【主訴】 下腹部痛
【現病歴】 本日夜中より下腹部痛の症状認め、受診。
【既往歴】 膀胱癌(膀胱全摘+尿管皮膚瘻術) 、胃癌術後
【身体所見】 BT 35.3℃、PR 58/min、BP 136/98mHg、腹部平坦、軟、腸蠕動音±、ストマ留置あり、左上腹部~正中部に圧痛あり、反跳痛なし。
【データ】WBC 5100、CRP0.01
画像はこちら
小腸の拡張、液貯留を認めています。
また膀胱癌術後で尿管皮膚瘻を認めています。
閉塞機転はないでしょうか?
ちょっと今回はそれほど目立たないですが、small bowel feces signを下腹部正中部に認めており、同部の小腸が最も拡張しているように見えます。
その先を追ってみると、少し腸管がねじれたような形になって細くなっており、同部が閉塞機転であることがわかります。
ただし(ねじれるような形を認めていますが)、複数の腸管を巻き込んでいるわけではなく、closed loopを形成している様子はありません。
腸管系の急激な変化(caliber change)の様子は冠状断像でわかりやすいですね。
手術歴があることから同部に癒着があり、腸閉塞を起こしていると推測することができます。
診断:癒着による(機械性単純性)腸閉塞
※保存的に加療され、退院となっています。
その他所見:
- 肝嚢胞散見。
- 両側腎結石あり。両側腎外腎盂疑い。
- 胃術後、膀胱全摘後。
症例11の動画解説
お疲れ様でした。
今日は以上です。
今回の気づきや感想などを下のコメント欄にお願いします。

捻れているか、癒着に伴うものか良くわかっていません。癒着に伴う場合、放っておいても良くなるので症状緩和だけさせるのでしょうか?癒着してるから固くなっており今後ずっと通りにくいのか?解説から恐らく前者なのかと考えています。
ありがとうございました。
アウトプットありがとうございます。
>捻れているか、癒着に伴うものか良くわかっていません。
癒着により少しねじれていることもありますね。
>癒着に伴う場合、放っておいても良くなるので症状緩和だけさせるのでしょうか?癒着してるから固くなっており今後ずっと通りにくいのか?解説から恐らく前者なのかと考えています。
後者の可能性もあります。
ですので、緊急性はありませんが、手術になることもありますね。
閉塞機転は分かりましたが,癒着と言い切ることができませんでした.
アウトプットありがとうございます。
癒着と言い切ることは難しいかもしれません。
血流障害がない(なので緊急性はそこまで高くない)と言う点に気づけたらOKです。
減圧などは必要ですが、緊急手術は必要ないという点です。
解答の狭窄部とは別に、もう1カ所「狭窄かな」と疑った部分がありましたが…蠕動運動のようです。
アウトプットありがとうございます。
複数の狭窄を疑う所見を近くに認めている場合は、closed loopを形成していないか丁寧にチェックする必要がありますね。
狭窄部位、癒着性の可能性、単純で分かるような虚血所見(壁高信号やsmaller SMV、壁ないガス、free air等)をしっかりチェックできました ^^
アウトプットありがとうございます。
>単純で分かるような虚血所見(壁高信号やsmaller SMV、壁ないガス、free air等)をしっかりチェックできました ^^
素晴らしいです。
施設によっては単純CTしか撮影できない、造影CTのハードルが高いというところも多いかと思います。
単純のみでも最低限の評価はしなくてはなりませんね。
拡張腸管を追っていくというのはまだまだできていません。
small bowel feces signは大きな手がかりですね。
ここから腸管を追うと、あっちは拡張している、こっちは細くなっている、つまり閉塞部位かなと見当がつきます。
腸間膜の浮腫(33~42/99)がありそうに思えましたが、有意ではありませんか。
アウトプットありがとうございます。
>small bowel feces signは大きな手がかりですね。
ここから腸管を追うと、あっちは拡張している、こっちは細くなっている、つまり閉塞部位かなと見当がつきます。
そうですね。small bowel feces signは「閉塞機転はここだよ」と多くの症例で教えてくれる強力な武器ですね。
>腸間膜の浮腫(33~42/99)がありそうに思えましたが、有意ではありませんか。
今回は単純で、かつ痩せている、かつ拡張した腸管が占拠している、かつ全体的に脂肪織濃度が高いため条件が悪いですが、同部に腸間膜の浮腫はなさそうです。
閉塞起点を探すのはできるようになってきましたが、closed loopの有無の判断が自信ないです。特に前回症例のような腸管拡張が目立たないclosed loopがあると言うことを知ってしまうと、実はloopなのでは…と疑心暗鬼になってしまいます。患者さんに実害が及ばないこのブートキャンプでたくさん失敗して、冷や汗をかきながら、ご指導いただけることに幸せを感じる今日この頃です。
アウトプットありがとうございます。
確かにloopはありません、機械性単純性腸閉塞です!
と言うのには慣れるまでは(慣れても?)勇気がいりますね。
毎回ですとオオカミ少年のようになってしまうかもしれませんが、絞扼性腸閉塞を過小評価(実際は絞扼性腸閉塞なのにそうではないと診断)するよりは過大評価(実際は絞扼性腸閉塞ではないのにそうだと診断)する方が症例によってはよいケースもあると思います。
今回は単純CTしか撮影されていませんが、心配ならば「絞扼性腸閉塞の可能性もあるので造影CTも追加」としてより画像を見えやすい環境にして、造影効果の有無もチェックするのもアリだと思います。
>患者さんに実害が及ばないこのブートキャンプでたくさん失敗して、冷や汗をかきながら
そうですね。まだまだ序盤ですので、是非ブートキャンプでたくさん冷や汗をかいていただきたいと思います(^_^;)
絞扼性でないことはわかったので、個人的なこの講座にかかげた小目標は達成かな、と思います。
実はcaliber changeが一番難しい気がします。
他の所見をヒントに地道に探していくしかないですね。
アウトプットありがとうございます。
>絞扼性でないことはわかったので、個人的なこの講座にかかげた小目標は達成かな、と思います。
まずはそこが一番重要ですね。
>実はcaliber changeが一番難しい気がします。
今回はsmall bowel feces signが軽度であったこと、横断像ではbeak signがわかりにくく閉塞機転が見つけにくかったことが少し難しかったかもしれません。
横断像よりは冠状断像が今回はわかりやすいですね。
胃opeの再建はRou en Yでしょうか?
アウトプットありがとうございます。
また確認します。
再建はおっしゃるようにRou en Yでした。
腸管が全体的に壁が高吸収のような気がしたのですが、これは正常なんですね。一部の腸管で高吸収な前回とは違い今回は全体的に高吸収なので、そういった場合には異常とはとらないほうがいいですかね。あと、腸管浮腫になっているような気もしましたが、こちらも撮像条件的にそう見えているだけなのですね。数をこなせば目が慣れてくるものなんですかね?
Caliber changeやSmall bowl signには気づいてたのですが、腸管を一応おってみると途中で追えなくなり、ここも閉塞起点なのではないか?いくつかと疑ってしまいました。複数の閉塞起点があるケースは、絞扼性でない限りあまりないですから、今回は明らかに閉塞を示唆する所見があるとところのみを所見としてとって単純性腸閉塞と診断するという考えでも大丈夫でしょうか。
アウトプットありがとうございます。
改めて今回の症例を見直しましたが、単純のみですし内臓脂肪も少ない方でちょっと見えにくい症例ですね。
>今回は全体的に高吸収なので、そういった場合には異常とはとらないほうがいいですかね。
そうですね。closed loopを形成しているところにのみ高吸収壁を認めた場合は有意ですが、今回は有意ではありません。
>腸管浮腫になっているような気もしましたが、こちらも撮像条件的にそう見えているだけなのですね。
腸管浮腫となると粘膜下層の肥厚が目立つことになりますがそのような所見は認めていません。
>Caliber changeやSmall bowl signには気づいてたのですが、腸管を一応おってみると途中で追えなくなり、ここも閉塞起点なのではないか?いくつかと疑ってしまいました。
それらのサインに気づけることがまずは大事なのですが、今回は綺麗なbeak signとも言えず、また単純のみですので狭くなっているところの連続性が追いにくい症例ですね。
また系統的読影でもSTEP5や6で閉塞起点を見つけるしかなく、結果的に癒着による(機械性単純性)腸閉塞なのですが、難易度はかなり高いと思います。
>複数の閉塞起点があるケースは、絞扼性でない限りあまりないですから、今回は明らかに閉塞を示唆する所見があるとところのみを所見としてとって単純性腸閉塞と診断するという考えでも大丈夫でしょうか。
そうですね。症状や血液データも参考にしつつ今回は腹水も出ていないですし、closed loopを疑う所見もはっきりしないのでまずは保存的にと単純性腸閉塞と診断するという症例となります。