
症例22
【症例】50歳代男性
【主訴】腹痛
【現病歴】AVMからの被殻出血のため回復期リハ病棟入院中。 本日午後3時頃急に下腹部痛が出現した。
【既往歴】AVM、被殻出血、虫垂炎、高血圧
【身体所見】意識晴明、左半身不全麻痺、会話の理解は良好、36.5°C、腹部:膨隆、全体に板状硬、下腹部正中に圧痛点あり、反跳痛-、筋性防御不明、右下腹部にope scar
【データ】WBC 9400、CRP 0.06
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小腸の拡張、液貯留、ニボー像を認めています。
左下腹部に腸間膜の浮腫を認める腸管群を認めています。
また壁肥厚があるように見えます。
このような所見をみたら、「closed loopを形成しているのではないか?」と疑う必要があるのでしたね。
この症例では、冠状断像の方がわかりやすいので冠状断像で見てみましょう。
すると、冠状断像で扇状に広がる腸間膜の浮腫が明瞭です。
また2箇所でbeak signを認めており、口側の腸管が拡張していることがわかります。
もう1箇所beak signを認めており、やはりclosed loopを疑う所見です。
虚脱しているbeak sign先の腸管は肛門側の腸管と考えられます。
続いて、造影CTを見てみましょう。
closed loopの様子は造影でより明瞭です。
明らかな腸管の造影効果不良は認めていません。
また、closed loopを形成している小腸の一部で3層構造を保った壁肥厚を認めています。
このような3層構造を保った壁肥厚(target waterパターン)を見た際には、絞扼性腸閉塞も考えなければならないのでした。
診断:絞扼性腸閉塞
※外科で手術となりました。
~~~~~~~~~~~~~~~~~手術記録より抜粋~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
S状結腸の結腸垂と盲腸の結腸垂が癒着し、内ヘルニアを形成していた。
腸管は拡張し、うっ血していたが、蠕動良好であるため腸管切除は行わなかった。
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その他所見:
- 胃内に残渣あり。
- 腎嚢胞あり。
- 輸精管の石灰化あり。
症例22の動画解説
お疲れ様でした。
今日は以上です。
今回の気づきや感想などを下のコメント欄にお願いします。

本当に冠状断は、腸管を追いやすいです。横断像では折り返しの部分の走行が難しいですが、冠状断では上下の関係がわかりやすいです。
アウトプットありがとうございます。
この症例も冠状断像がわかりやすかったですね。
横断像では走行を追うのが難しくても冠状断像で一目瞭然。
絞扼性腸閉塞の冠状断像での観察がいかに重要かを改めて教えてくれる症例ですね。
還流障害による漿膜下浮腫と思われる、絞扼部付近の腸管壁肥厚について見慣れてきました。
慣れると驚かなくなるし、絞扼部特定の手助けにもなるので大切ですね ^^
アウトプットありがとうございます。
>還流障害による漿膜下浮腫と思われる、絞扼部付近の腸管壁肥厚について見慣れてきました。
粘膜下層の浮腫ですね。
>慣れると驚かなくなるし、絞扼部特定の手助けにもなるので大切ですね ^^
そうですね。冠状断像が今回も見やすいですね。
腸閉塞の診断は造影CTと考えていましたが見慣れれば単純CTでもほぼ診断できるのですね
もう少しでコツが掴めそうです
アウトプットありがとうございます。
虚血の有無については造影が必要ですが、腸閉塞やclosed loopの同定は単純でもできます。
もちろん造影の方がわかりやすいケースが多いですが。
coronal vewのslice30-35、結腸脾湾曲部の辺りに見られるのは腸重積でしょうか?
アウトプットありがとうございます。
>結腸脾湾曲部の辺りに見られるのは腸重積でしょうか?
確かにわずかですがありそうですね。
横断像ですが、171/325あたりですね。
すぐに戻りそうですが、指摘しておいた方がいいですね。
大分見慣れて来たのか、久しぶりに必要な所見を取れた気がします。症例を詰んで、腸管の苦手意識を克服したいです(^^)/
アウトプットありがとうございます。
必要な所見を取れたということでよかったです。
今回は絞扼性腸閉塞としてはかなり典型的な症例でしたが、こういった症例を確実に絞扼性として拾い上げたいですね。
上腸間膜静脈が細いのではないかと考えてしまいました
絞扼部を特定するのに、冠状断像が役に立つのは、CTを臥位で撮影しているからでしょうか
アウトプットありがとうございます。
確かに上腸間膜静脈は少し細めではありますが、上腸間膜動脈と比べるとやや大きいか場所によっては同じくらいですので、smaller SMV signかと言われると取り過ぎかなと考えます。
>絞扼部を特定するのに、冠状断像が役に立つのは、CTを臥位で撮影しているからでしょうか
冠状断像が役立つことが多いですが横断像の方がわかりやすいこともあります。症例によっては矢状断像がわかりやすいこともあります。
矢状断像が最も断面積が広いので見つかることが多いのかもしれません。