
症例37
【症例】40歳代 男性
【主訴】腹痛
【現病歴】4時間ほど前に電車に乗車中に臍部上より腹痛出現。徐々に増悪し起立困難となり、救急外来受診。生ものは数日食べていない。今朝お雑煮を食べた。
【既往歴】なし
【身体所見】BT 36.8℃、BP 117/84mmHg、HR 91/min、SpO2 97%、苦悶様、腹部:臍上部広範囲圧痛あり、反跳痛±
【データ】WBC 8100、CRP 0.03
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腹部正中部から右側にかけて腸間膜の浮腫を有し、境界が不明瞭な腸管群があることがわかります。
この様な所見を見たときに考えなければならないのが同部でclosed loopを形成しているのではないかということです。
beak signを疑う所見はないでしょうか?
分かりにくいですが、その目で見るとbeak signを認めていることが分かります。
やはりclosed loopを形成しており、絞扼性腸閉塞が疑われます。
次に造影CTを見てみましょう。
closed loopを疑う部位は特に早期相で著明に造影効果が減弱していることが分かります。
平衡相ではやや造影効果を認めていますが、少なくとも腸管虚血があることがわかります。
次に冠状断像を見てみましょう。
その目で見るとbeak signを認めており、拡張した腸管と連続しており、口側の腸管であることがわかります。
ヘルニア門辺りから連続する虚脱した腸管を認めており、肛門側の腸管が疑われます。
診断:絞扼性腸閉塞
※外科で緊急手術となりました。
~~~~~~~~~~~~~~~~手術記録より抜粋~~~~~~~~~~~~~~~~
大網の末端に2箇所、浮腫を疑う出血点があり、大網裂孔(もしくは大網同士の癒着で生じた孔)に空腸が陥入し、内ヘルニアを生じたものと推察。
小腸切除は実施せず。
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ということで、ダイナミックの早期相ではかなり腸管の造影効果は落ちていましたが、虚血のみで壊死には至っていませんでした。
その他所見:
- 肝嚢胞あり。
- 腎嚢胞あり。
- 胆嚢結石あり。
症例37の動画解説
お疲れ様でした。
今日は以上です。
今回の気づきや感想などを下のコメント欄にお願いします。

単純CTでも明らかに危ない絞扼性腸閉塞ではないかとすぐに疑えるようになりました.
37例目なので当然かもしれませんが.
アウトプットありがとうございます。
>単純CTでも明らかに危ない絞扼性腸閉塞ではないかとすぐに疑えるようになりました.
それは嬉しいご報告ありがとうございます。
>37例目なので当然かもしれませんが
そうですね。これだけやれば慣れてきますよね。
OP歴がなく、袋に包まれたような虚血小腸の塊だったので「内ヘルニア疑い」としました。
腸管虚血がはっきりしていたので、腸管壊死かなと思いましたが、壊死はなかったのですね。
アウトプットありがとうございます。
>袋に包まれたような虚血小腸の塊だったので「内ヘルニア疑い」としました。
内ヘルニアが指摘できればよいですね。
>腸管虚血がはっきりしていたので、腸管壊死かなと思いましたが、壊死はなかったのですね。
すぐに手術したためだと思われますね。
読影では限界があるとはいえ、内ヘルニアの際に「〇〇裂孔からの脱出っぽい」と予測できると玄人ですね ^^
アウトプットありがとうございます。
>内ヘルニアの際に「〇〇裂孔からの脱出っぽい」と予測できると玄人ですね ^^
そうですね。
腹膜窩ヘルニアの場合は、動脈をメルクマールにして同定可能と言われていますが、頻度は少ないですね。
腹膜裂孔ヘルニアの場合は、大網裂孔ヘルニアなど分かりやすいものはわかることがありますが、基本難しいですね。
closed loopっぽい。そう言う目で見れると判断が早くなりますね。ありがとうございました。
アウトプットありがとうございます。
>closed loopっぽい。そう言う目で見れると判断が早くなりますね。
ぽいと思えるかどうか、その判断にかかる時間をいかに短くできるか、が腸閉塞診断で一番の肝とも言えると思います。
腸管拡張がはっきりとせず
腸閉塞があるのか迷う症例でした。
絞扼性腸閉塞はこんな感じでもあるのですね。
勉強になりました。
ありがとうございました。
アウトプットありがとうございます。
>腸管拡張がはっきりとせず腸閉塞があるのか迷う症例でした。
おっしゃるとおり腸閉塞!というには悩ましい症例かもしれません。
>絞扼性腸閉塞はこんな感じでもあるのですね。
そうですね。
腸間膜浮腫を来している腸管群に違和感を抱くのが第一歩ですね。
続いて冠状断像で典型的な扇形になっている点や造影CTで造影不良を確認して最終的に絞扼性腸閉塞と診断したいところです。